【keyword: こどもの世界】ちいさいみちこちゃん 中川李枝子 作 山脇百合子 画
中川李枝子、山脇百合子コンビといえば「ぐりとぐら」。だれもが馴染み深い名シリーズだけれど、正直に言ってわたしはこどもに読み聞かせてみた結果、やはりあまりピンとこない。一言で言うと、シンプルすぎるというか、淡白というか。予定調和な感じがしてしまう。
けれど同コンビによる「ねことらくん」が1ページ目からあまりに面白くて、そういえば自分の小さいときも「ぐりとぐら」より「いやいやえん」のほうが好きだったことを思い出した。「ねことらくん」につづいて読んでみたこの「ちいさいみちこちゃん」も、なかなかに一筋縄でいかない本で気に入った。(ちなみに女の子の行動にあまり関心を抱かない息子には、内容に違和感を持つこともなく「ふーん」な感じだった。)山脇百合子さんの絵が可愛いので、確かにさらっと楽しめる。けど、複数回読んでみることで様々な解釈がうまれる、一筋縄ではいかない感じが子より母であるわたしが気に入った。
なぜこの本がとても不思議なのだろうと考えてみて、作者の中川李枝子氏が保育師でもあったことをふと思い出した。それで、つじつまが合う。これは保育者がよく子供達を観察した経験をもとにした、こどもならではの、こどもの世界をただ描いているのかもしれない。わたしたち大人はついついこどもに「なんで?」「どうしたの?」なんて理詰めにしてしまうけれど、すべての言動に特別意味がなかったり、1秒後には興味の対象が変わっていたり、こどもはわたしたちの想像や解釈を超えた異次元を闊歩するどこまでも「自然」の存在なのだ。ちなみに「ぐりとぐら」は、やはり中川氏が保育者として活動する中でこどものニーズに応えた、大多数のこどもが単純に楽しいと思える内容であるにちがいない。
「いやいやえん」を久しぶりに読み返してみたくなった。というか、あらためて違う目線で「いやいやえん」を読んでみたいと思った。「なんでかな」と思ったら、こどものきもちを「聞き」に中川氏の本をひっぱりだそうと思う。
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