【keyword:知らないを知る】ホットケーキできあがり! エリック・カール作

幼いこどもはよほど特別なタイプではない限り、目の前のものがどのような経緯をたどってきたのか特に深く詮索しないということをこどもを産んで知った。だから、おもちゃもおやつも、親が買い与えることを繰り返すと、こどもは必然的に「売っているものを買う」ものだと素直に思いこむことを親になってみて知り、結構困惑気味である。まあ、わたしも小さい時はそんな程度の認識だったのかもしれないけど、それにしても今ほど実家のまわりに商業施設は多くなく今ほど過剰な消費社会でなかったことだけは確かだ。

『はらぺこあおむし』で有名なエリック・カールが『ホットケーキできあがり!』を書いたのは、1970年のことらしい。しかし、もちろん2012年生まれの息子もホットケーキは知っているし、大好物。彼に「ふーん『ホットケーキできあがり!』だって。読んでみる?」と訊いてみると案の定、<ああ、ホットケーキの話?>という表情で「うん、いいよ」と答えた。いざ読み聞かせ始めると、自分の知っていると思っていたことが氷山の一角であったことに気づいたようで、<ちょっと待てよ>という顔をしながら黙って興味深く聞いている。

この『ホットケーキできあがり!』はもう50年近く前に書かれた絵本だけれど、ネットで検索してみるとすでに19世紀末にはアメリカでホットケーキミックスが開発、販売されていたらしいので、エリック・カールのことだからおそらく子供達に知らないことを知ってもらおうと書いた1冊かもしれない。

この本を読んだ次の日、おやつにホットケーキが食べたくなった私が息子にカフェで食べるか、家で作るか2択で提案すると「作る、作る!」と言ってくれた。そして、ふたりで初めて作ったホットケーキは市販のミックス粉ではなく、『ホットケーキできあがり!』のようにたまごと牛乳と小麦粉(と砂糖とベーキングバウダー)を合わせたもの。自分で材料を混ぜて、焼いて作ったふわふわのホットケーキを食べたとき、間違いなく息子は物事の本質に触れたと思う。

STORY TIME 365

2023年〜▼ 日々の記録。 2019年まで▼ こどもと選んだ、読んだ800冊を超える絵本の記録。読み聞かせや本の選び方、大好きな作家、図書館、美術館、絵本にまつわる日々のこと。

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