【keyword: 悲劇は喜劇】「ぶたのたね」シリーズ 佐々木マキ作

ナンセンスやユーモアを息子が漠然と理解し楽しめるようになったのが、4歳前あたりから。

ユーモアの存在を認められる段階に入ったのが、と言ってもいいかもしれない。

ナンセンスとは系統が少し違うがたとえば、1歳前後のこどもに定評のある人気絵本「だるまさんが」や名作「もこもこもこ」や五味太郎「きんぎょがにげた」あたりのリピート率が我が家は低かった。息子は生後5ヶ月から保育園に入っていたこともあり、同い年のお友達と息子を比べて観察することができたり保育を担当してくださる先生からこどもの性質を客観的に教えていただく機会が多かったのだけれど、一貫して家の外でも中でも「どこか真面目」なタイプ。だから様々な本を読み聞かせしてきたが、彼の正義感や倫理観に反したり、理解不能な絵本には真剣には「?」という表情をあからさまにしていた。長新太作品がわかりやすい例で、どれもこれも長らく「???」な対象で、欲しい借りたいとねだってくることがなかった。

だから、佐々木マキ作品を親子で楽しめる日をいまかいまかと待ちわびていた私は、この「ぶたのたね」シリーズで息子が声をたてて笑ってくれた時、こどもの成長を強く実感し、心の底から嬉しく思った。それまで本を読む目的は主に登場人物に感情移入するためだったり絵を見たいがためだっりしたのが、ついに「くだらないなあ」とか「まさか」といった、対象を自分と切り離し「笑い飛ばす」ことが愉快なことであると4歳前あたりから知ったようである。

実際、この「笑い飛ばす」というのは、こどもがひとつたくましくなった証拠でもあると思う。こどもがファンタジーを抱くのは本能で、良い意味での現実逃避力であるわけだけれど、生きている中ではどうしたって逃げられないことも多々あることを3歳あたりから嫌でも徐々に知ることになる。そんな時、「笑い飛ばせる」かどうか。どんな困難も見方を少し変えれば案外笑えることであると知っていれば、これから先さまざまな波を乗り越えていけることをユーモアにあふれる絵本はおおらかに導いてくれる。

「ぶたのたね」「またぶたのたね」「またまたぶたのたね」、どれから読んでも大丈夫だから図書館でどれかひとつ見つけたら手にとってみてほしい。最大の悲劇が最高のパロディであることをこどもが知るのにうってつけの名作だと思う。

STORY TIME 365

2023年〜▼ 日々の記録。 2019年まで▼ こどもと選んだ、読んだ800冊を超える絵本の記録。読み聞かせや本の選び方、大好きな作家、図書館、美術館、絵本にまつわる日々のこと。

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