TERADA CRAFT STUDIOへ行く

今夏にテレビで見たペーパークラフトアートのスタジオがずっと忘れられずにいて、今朝思い立って見学申し込みのお電話をする。「今日、大丈夫ですよ」と、スタジオ主である寺田松雄さんとおぼしき方が電話に対応してくださった。

地図で住所を確かめると、そのスタジオはわたしが小さい頃から行き慣れた渋い繁華街の真ん中にあったので迷わずに行ける確信があった。それなのにオフィスや飲食がぎっしり立ち並ぶ細かいビル群では、あえてささやかに掲げている工房の看板をみつけるのに一苦労。4才のこどもが不安で騒ぎ出す1秒前に発見。よかった。

ところ狭しと置かれたペーパークラフトとその材料。色紙はもちろん、牛乳パックやなにかの切れ端のようなものまで、ありとあらゆる「紙」がストックされている。何度も動物の目に使用したと思われる小さい丸い穴がいくつもくり抜かれた金色の紙が残り僅かの状態になって保管されているのを見て、いつなんどきアイディアが降りてきたときに具現化できるよう数多の材料がここにあることを理解した。

写真だと雑然としているように見えてしまうかもしれない。けれど実際目の当たりにすると、すべての作品に、材料に、紙に、寺田さんの愛情が溢れていた。動物やおばけやこどもといった作品たちの愛らしい表情、木や花々の作品のディテイル、どれもが全く手を抜かれず個性ゆたかに仕上げられている。

お店ではなく、あくまで寺田さんご自身のアトリエを公開されているだけなので、わたしと息子は「お邪魔」している状態だったのだけれど、寺田さんはわたしたちが閲覧している間ずっと席を立って静かに見守ってくださっていた。最後、お声をかけさせてもらうと、作品の中には50年以上経っているものもあること、さまざまな身の回りにある紙製品をもちいて質感を出すのに試行錯誤されていること、頭の中にアイディアが降りてきたらすぐ形にしてみること、1日1つはなにかしら作られていることなど、ぽつぽつと楽しそうにお話してくださった。

紙だけでなく川で拾った石にアクリルペイントしたカエルやオブジェ、木の枝でつくったコオロギもあり、どんなものでも発想と工夫、センス次第であることを教えられる。

息子をここに連れてきたかったのは、買い与えてしまう親たちが悪いのだけれど、ミニカーやフィギュアのような玩具メーカーすでに具体的に加工して販売しているおもちゃばかり欲しがるので、自分でも頭に浮かんだものを身近な材料で作れることに強いインパクトで気づいてほしかったから。

もう半世紀以上も作品作りをされている寺田さんのところへ伺わせていただくことができて、本当によかった。信念をもって活動している人の姿を、息子にはたくさん見てほしいと、テレビやwebを通じてばかりではなく、自分の目で見て、空気を肌で感じてほしいと思っている。

帰り際、寺田さんが息子へ2体くださったので、潰れたり折れたりしないよう、ドキドキしながら持ち帰った。帰宅して飾ってみると、紙でできた作品たちは簡単に折れ曲がることなく、しなやかで凛としている。「紙は、けっこう丈夫なんです」と、寺田さんがおっしゃっていた通りだ。たくさんのインスピレーションに満ちた訪問だった。

*寺田松雄さん、TERARA CRAFT STUDIOのみなさま、今日は本当にありがとうございました。


STORY TIME 365

2023年〜▼ 日々の記録。 2019年まで▼ こどもと選んだ、読んだ800冊を超える絵本の記録。読み聞かせや本の選び方、大好きな作家、図書館、美術館、絵本にまつわる日々のこと。

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